2020年10月31日土曜日

行政書士試験「請負」(2011-34)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア)、ウ)、エ) 

【改正点】なし。

イ) 民法と同様である。634条2項。

【改正点】あり。旧634条は削除された。
旧634条2項が規定していた、「瑕疵の補修(修補)に代え、または補修(修補)とともに、瑕疵に基づく損害賠償」を求め得るか否かは、契約不適合を理由とする追完請求権等に関する売買の規定の解釈(準用。559条、562ー564条)に委ねられることになった。道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)442ー443頁参照(石川博康執筆)449頁。

2020年10月29日木曜日

行政書士試験「契約総合」(2011-32)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 正しい。忘恩行為が問題となる事案であるが、判例は、贈与の見返りとしての扶養義務という負担の不履行を理由に、贈与契約の解除を認めた(最判昭和53年2月17日。但し判例は忘恩行為構成ではなく、負担付贈与構成をとり、553条が準用する541条による解除を認めた)。藤岡-磯村-浦河-松本他『民法Ⅳ』第3版補訂(2009年、有斐閣)58頁。

【改正点】なし。

2) 誤り。よってこれが正解である。民法557条は、「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる」と規定するが、ここでの問題は着手した側が、未だ着手していない側に向かって解除できるかである。判例はこの点肯定的判断をしている(最大判昭和40年11月24日)。前掲藤岡他70頁。

【改正点】あり。この肢が「誤り」である点に変更はないが、解説を次のように変更する。
民法旧557条は、「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは」「契約の解除をすることができる」と規定していたが、これとの関係で、着手した側が未だ着手していない側に向かって解除できるかが問題となった(判例は肯定する〔最大判昭和40年11月24日〕)。現行の新557条(同条1項但書注意)は、この大法廷判決を明文化したものである。

3) 正しい。信頼関係法理である。最判28年9月25日、前掲藤岡他129頁。

【改正点】なし

4) 正しい。委任事務が「受任者の利益のためにもなされた場合」、651条による解除を認めないのが判例であるが(大判大正9年4月24日)、ここでいう「やむを得ない事情があるとき」や委任者が解除権を放棄したとまでの状況がない場合、同条による解除が認められる(最判昭和43年9月20日、最判昭和56年1月19日)としている。前掲藤岡他188-189頁。

【改正点】あり。これら判例を整理したものが新651条2項である。委任事務が「受任者の利益のためにもなされた場合」(新651条2項2号括弧書注意)であっても、委任契約を解除し得るが、「やむを得ない事由」がない限り受任者に損害賠償請求しなければならない、とされた。新規定のもとでは、「やむを得ない事由」がなくとも新651条にもとづく解除が可能となったことに注意。道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)219ー220頁参照(石川博康執筆)449頁。

5) 正しい。大判昭和7年4月30日である。

【改正点】なし。

2020年10月27日火曜日

行政書士試験「連帯債務、連帯保証」(2011-31)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 正しい。連帯債務については民法436条、連帯保証については457条2項。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)132、152頁。

【改正点】あり。旧436条については新439条が規定することとなった。

イ) 正しい。連帯債務については437条。一方連帯保証人についての免除は、主たる債務者には影響しないので、本肢のようになる(458条は437条を準用するものの、連帯保証人には負担部分がないので、負担部分の存在を前提とする同条を準用する余地がない)。前掲野村他133、161頁。

【改正点】あり。旧437条は削除された。例えば、AーCは甲に対し900万の「連帯債務」を負っており(負担部分3分の1ずつ)、甲がAに対し債務免除をしたとする。この場合新法では、免除後も甲はBとCに900万円を請求し得るようになった(連帯債務における債務免除は相対的効力しか有しない〔新441条本文。旧437条と比較せよ〕)。なお、「連帯保証」について、問題文の「主たる債務者はその債務の全額について免れることはない」という結論については、変更はない(新458条。連帯債務の場合と同様相対的効力しか有しない)。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)219ー220頁参照(幡野弘樹執筆)。

ウ) 誤り。連帯債務については、「負担部分について自己の債務を免れることができる」(439条)、のである。連帯保証については正しい説明となっている。この場合も、イ)と同様458条による439条の準用の余地はない。

【改正点】あり。旧439条は削除された。債務免除と同様、連帯債務における消滅時効相対的効力しか有しない(新441条本文)。AーCは甲に対し900万の「連帯債務」を負っており(負担部分3分の1ずつ)、Aにつき時効が成立したとする。この場合でも、甲はBとCに900万円を請求し得るようになった。連帯保証についての説明は正しい(新458条)。前掲大村他221ー22頁(幡野弘樹執筆)

エ) 誤り。連帯債務については正しい(434条)。一方連帯保証人に対する履行の請求は、主たる債務者に対しても効力が及ぶ(458、434条)結果、時効は中断する(147条1号)。

【改正点】あり。旧434条は削除された。新法では、「連帯債務において、債権者が連帯債務者の1人に対してした債務の履行の請求」は、他の債務者に効力が及ばないこととされた(相対的効力。新441条本文〔同条但書注意。新441条本文は任意規定である〕)。前掲大村他215頁以下(幡野弘樹執筆)。また、「連帯保証人に対する履行の請求」についても、主たる債務者に効力が及ばないこととされた(相対的効力新458条〕。つまり主たる債務の時効は中断しない)。前掲大村他257ー258頁(大澤彩執筆)。

オ) 誤り。連帯債務については正しい(442条1項)。一方連帯保証の場合も求償は可能である(465、442条)。

【改正点】なし。

2020年10月26日月曜日

行政書士試験「無効、取消」(2011-27)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 誤り。条文上保証人は取消権者ではない(民法120条参照)ので、当該金銭消費貸借契約を取消すことはできない。この場合の保証人については、山田-河内-安永-松久『民法Ⅰ』第3版補訂(2007年、有斐閣)149頁参照。

【改正点】なし

イ) 誤り。詐欺に気づいた後BがCに絵画を転売したのであれば、BはAとの契約を取消すことはできないが(125条5号、法定追認)、この場合、BはCへの転売後詐欺に気づいたのであるから、取消権を失わない。

【改正点】なし

ウ) 誤り。著名な論点である。無効は誰でも主張できるのが原則だが(前掲山田他144頁)、錯誤無効については、表意者を保護するものであるから、表意者以外の者からの無効主張を認める必要はない、と解されている(最判昭和40年9月10日)。前掲山田他135頁。

【改正点】錯誤の効果が無効から取消に改められた(新95条1項)。これまで、錯誤無効は「無効」であるにもかかわらず、「表意者以外の者からの無効」主張は認められないとされてきたが(相対的無効、取消的無効)、この趣旨を取消として立法化したのが今回の改正である。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)23頁参照(角田美穂子執筆)。

エ) 誤り。強迫による意思表示は取消すことができるが(96条1項)、この取消権は、「追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する」(126条)。追認擬制なのではない。

【改正点】なし

オ) 正しい。121条但書である。

【改正点】旧121条但書の内容は、新121条の2第3項において規定されている。

2020年8月29日土曜日

行政書士試験「無償契約」(2012-32)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 正しい。552条。

【改正点】なし

2) 誤り。贈与者は、贈与の目的物についての瑕疵について責任を負わないのが原則であるが、贈与者が瑕疵の存在を知りそれを受贈者に告げなかった場合は、担保責任を負う(551条1項)。

【改正点】旧551条1項は削除された。この点新法(新551条)は、「贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する」としたが、特定時の状態で引き渡せばそれで足り、瑕疵担保や債務不履行責任を負わないというのがこの条文の趣旨である。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)418ー419頁参照(石川博康執筆)。

3) 誤り。必要費、有益費の説明は正しい(前者につき595条1項、後者につき595条2項、583条2項。なお196条参照)。但し有益費の償還につき裁判所は相当の期限を付与することができる(583条2項但書)。

【改正点】なし

4) 誤り。受任者は、有償無償問わず善管注意義務を以て委任事務を処理しなければならない(644条)。

【改正点】なし

5) 誤り。無償受寄者は、寄託物につき自己の財産に対するのと同一の注意を以て寄託物を保管する義務を負う(659条)。

【改正点】旧659条の内容は、新法では659条に規定されている。新規定では主語が「無報酬の受寄者」に改められた。

2020年8月23日日曜日

行政書士試験「代理人と使者」(2012-28)【条文知識、理論問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 誤り。代理人としての地位は委任契約ばかりでなく、請負や雇用によっても発生する。前掲山田他164-165頁。

【改正点】なし。

2) 誤り。頻出の肢である。代理人に行為能力は不要である(102条)。使者についての説明は正しい。前掲山田他161頁。

【改正点】旧102条の内容は、新法では102条本文に規定されている。

3) 正しい。101条参照。前掲山田他161頁。

【改正点】なし。

4) 誤り。代理人による権限逸脱の場合、表見代理の成立(110条)や本人の追認(116条)により代理行為が有効になる場合もある。一方使者が本人の完了した意思表示と異なる意思表示を相手方に伝えた場合は、本人の錯誤(95条)と処理されるので、この場合意思表示が無効となる余地がないというのは誤りである(95条但書参照)。前掲山田他161頁。

【改正点】錯誤に基づく法律行為の効果は「無効」から「取消」に変更された(旧95条本文、新95条1項)。解説文は、「この場合意思表示が(取消の結果)無効となる余地がないというのは誤りである」とすると正しくなろう。

5) 誤り。任意代理の場合、本人の許諾がある場合かやむを得ない事由がなければ復代理人を選任できないが(104条)、法定代理の場合は自由に選任できる(106条)。前掲山田他167-168頁。

【改正点】法定代理(旧106条)については、新105条で規定されている。

2020年8月10日月曜日

行政書士試験「解除」(2013-31)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 誤り。当該建物は「Aの過失」により焼失しているので、危険負担ではなく債務不履行(履行不能)が問題となる。そして履行不能の場合、不能という性質上解除権の行使(543条)について、催告や履行期の到来は不要と解されている。藤岡-磯村-浦河-松本『民法Ⅳ』第3版補訂(2009年、有斐閣)44頁。

【改正点】新法では、無催告解除の類型が法定化されている(新542条)。旧543条の内容は、新542条1項1号(全部不能)と新542条2項1号(一部不能)において規定されている。

イ) 誤り。引渡期限が来てもAが当該建物を引き渡していないのだから、履行遅滞(412条)が問題となり得る。履行遅滞の場合、債権者は相当期間を定めた履行の催告の後解除権を行使することになるが(541条)、相当期間を定めていない催告をした場合でも、相当期間たてば解除はできると解されている(改めての催告は不要である)。前掲藤岡他43頁。

【改正点】なし

ウ) 正しい。544条1項。

【改正点】なし。

エ) 誤り。解除の結果として第三者Cの権利を害することはできないが(545条1項但書)、判例はC(解除前の第三者)がこの保護を受けるには対抗要件としての登記が必要とする(大判大正10年5月17日)。前掲藤岡他50頁。

【改正点】なし

オ) 正しい。解除権行使の結果、当事者は原状回復義務を負うことになるので(544条1項)、物(自動車)が給付されていればこれを返還しなければならず、さらに545条2項との均衡上物の使用利益も返還しなければならないからである。前掲藤岡他49頁。

【改正点】明文がなかった使用利益の返還について規定が設けられた(新545条3項)。

2020年8月8日土曜日

行政書士試験「賃貸借」(2013-32)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア)イ)エ)オ)は改正点なし。

ウ) 誤り。「第三者の弁済」が問題となる事例である。この場合Cが弁済について利害関係のない第三者である場合、Aの意思に反してまで賃料をBに支払うことはできないが、この事例のような、借地上の建物の賃借人の地代の弁済については、法律上の利害関係があるとするのが判例である(昭和63年7月1日)。よってCはAに無断でも土地賃料の支払をBになし得る(474条1項但書に言う「反対の意思表示」の存在も読み取れない)。

【改正点】旧474条2項「利害関係を有しない第三者」という文言が、「正当な利益を有する者でない第三者」に改められた(新474条2項)

2020年8月5日水曜日

行政書士試験「詐害行為取消権」(2013-30)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 誤り。判例は、遺産分割は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であり、財産権を目的とする法律行為にあたるとしている(最判平成11年6月11日)。つまり詐害行為取消権の対象になる。

【改正点】新法は、旧424条1項に規定されていた「法律行為の取消し」を「行為の取消し」(新424条1項)に改めた。これは従前、厳密な意味で法律行為ではない弁済等も詐害行為取消権の対象としてきたことに対応する。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)185ー186頁(幡野弘樹執筆)。

2) 正しい。最判昭和49年9月20日である。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)104-105頁。

【改正点】なし

3) 誤り。この場合、原則詐害行為取消権の対象にならないが、768条3項の趣旨に反し不相当に過大であり、財産分与に仮託してなされたような財産の処分と言えるような特段の事情がある場合は、対象になるというのが判例である(最判昭和58年12月19日)。前掲野村他104-105頁。

【改正点】なし。なお新424条の4参照。

4) 誤り。詐害行為取消権の範囲は原則債権者を害する程度、即ち債権額である(大判明治36年12月7日)。しかし詐害行為の目的物が不可分の場合、その目的物が債権額を超える場合でも、詐害行為を全部取消し得る(最判昭和30年10月11日)。例えば債権額<不動産価額の場合であっても、債権保全のため当該不動産の贈与行為全部を取消し得る。前掲野村他112-113頁。

【改正点】前掲大判明治36年判例について明文化がなされた(新424条の8)。前掲大村他200頁。

5) 誤り。詐害行為取消権を行使した債権者は、取消に基づいて返還すべき財産が動産や金銭である場合、債務者ではなく自己に引渡しを求める事ができるというのが判例である(大判大正10年6月18日)。前掲野村他114頁。

【改正点】前掲大判大正10年判例について明文化がなされた(新424条の9)。
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2020年8月3日月曜日

行政書士試験「錯誤」(2013-27)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 誤り。「要素の錯誤」は、「因果関係」と「重要性」の2要素で判断される。前者は錯誤がなければ表意者は意思表示をしなかったということである。また後者は、当該錯誤が一般取引の通念に照らし重要な部分についての錯誤であること、を意味する。内田貴『民法Ⅰ』第2版(1999年、東大出版会)67頁。大判大正3年12月15日。

【改正点】新法では、旧95条に規定されていた「要素の錯誤」(解説文中の「重要性」)について具体化が図られた。つまり、「錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」(新95条1項本文)とされた。なお解説文中の「因果関係」についての説明は新法でも妥当すると思われる。

イ) 誤り。人違いの錯誤は、「売買」においては一般的に錯誤にならない(大判大正8年12月16日。但し不動産売買において錯誤になるとされた事案として、最判昭和29年2月12日)。一方「委任」においては相手が誰かは重要な意味を持つ。錯誤を認めた事案として大判昭和10年12月13日。山田-河内-安永-松久『民法Ⅰ』第3版補訂(2007年、有斐閣)133頁。

【改正点】なし

ウ) 誤り。動機の錯誤は、動機が相手方に表示され意思表示の内容になった場合、要素の錯誤とし得るが(大判大正3年12月15日)、動機の表示は黙示のものでもよい(最判平成1年9月14日)。前掲内田65頁。

【改正点】「動機の錯誤」についての判例法理が明文化された。つまり、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(新95条1項1号)は、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り」取消すことができる(新95条2項)、とされた(新95条1項本文の「重要性」要件も具備しなければならない)。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)20頁(角田美穂子執筆)。

エ) 正しい。「第三者」による錯誤無効の主張は許されないというのが判例だが(最判昭和40年9月10日)、本肢のように債権保全の必要性があり表意者が意思表示の瑕疵を認めている場合、例外として第三者からの錯誤無効の主張を認めている(最判昭和45年3月26日)。前掲内田71-73頁。

【改正点】従前、錯誤に基づく意思表示は「無効」とされていたが、新法では「取消し」できるものに改められた(新95条1項本文)。これは前掲昭和40年判例で示された立場即ち、「『相対的無効』『取消的無効』と説明してきたところを正面から『取消し』と規定するものである」。前掲大村他23頁。なお前掲昭和45年判例は、新法の下では妥当しなくなると思われる(第三者は、錯誤表意者の取消権を代位行使することになろうか)。

オ) 正しい。前掲内田67-68頁。大判大正7年12月3日。

【改正点】錯誤の効果が改正されたことに注意(新95条3項、前肢解説参照)。主張立証についての説明は新法でも妥当すると思われる。

2020年7月2日木曜日

行政書士試験「他人物売買」(2014-46)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

旧法下における担保責任制度についても大幅に改正された。本問については結果、問題自体が通用しないものになった。つまり本問自体は、試験勉強の必要がないということである。

【改正点】担保責任は、まず、法定責任説と契約責任説担保責任=債務不履行の特則とする説の論争に終止符が打たれ、後説を前提に「物、権利に関する契約不適合を理由とする債務不履行責任」(新562条以下。権利については新565条による新562ー新564条の準用)と位置づけられることになった。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)398ー403頁(石川博康執筆)。

1) 「甲土地はAが所有-中略-属しないことを知らなかった」。XY間で「甲土地売買契約」が結ばれたが、この甲土地は「他人物」でありかつ他人物ということにつきXが「善意」という事情がある。
2) 「甲土地の売却を申し入れた-中略-移転することができなかった」。他人物を目的物とする契約も有効であり、この場合「売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う」(560条)というのが民法の規定であり、売主Xはこの義務を履行しようとしたができなかったということになる。

【改正点】甲土地売買契約=他人物売買契約を締結すること自体は新法の下でも可能である。Xが新561条(旧560条)の義務を果たせば問題ない。なお新560条に注意。

3) 本問は、売主Xが上の義務を履行できず「解除権」を行使する場合の要件を(562条)、買主Yの主観的状態に応じて論ぜよということである。

【改正点】旧562条は買主の善意、悪意に応じて他人物売買の法的効果を変えていたが(故に解答で「Yの主観事情に応じて論じよ」とされている)、改正により旧562条は削除された。
そして前述の通り担保責任は「物、権利に関する契約不適合を理由とする債務不履行責任」という観点から再構成されたのだが、本問のような「権利の全部が他人に属する場合」には、新しく整理された新562条ー新564条の規定は適用されない(権利の一部が他人に属する場合に適用される)
新法の下では、このような場合は、「債務不履行の一般規定の適用によって処理されることが予想されている」(前掲大村他403頁。本問では履行不能で処理するということであろう。なお目的物が他人物であることにつき、売主買主共に善意か悪意かは問題とならない)。
但し実際の処理としては「契約不適合」の条文を用いた場合と処理はそれほど大きく異なるものではない、と解されている。潮見佳男『民法(全)』第2版(2019年、有斐閣)397頁。

3) 本問は、売主Xが上の義務を履行できず「解除権」を行使する場合の要件を(562条)、買主Yの主観的状態に応じて論ぜよということである。

【改正点】本問における解除権は新法の下では新542条をもとに行使していくことになろうか。

2020年6月25日木曜日

行政書士試験「詐害行為取消権」(2014-45)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 「Bに優先的な満足-中略-代物弁済としてBに譲渡」。本問では「詐害行為取消権」(新424条)が問題になる。多くの判例は、債権者による弁済の強要といった場合を除き(最判昭和45年11月19日)、代物弁済の詐害行為性を肯定する(大判昭和16年2月10日。相当代価での代物弁済も同様〔大判大正8年7月11日〕)。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)109-110頁。

【改正点】詐害行為取消権(新424条)については大幅に改正が行われた。特に破産法との関係で詐害行為取消権の類型化がなされた。本問では、「特定債権者に対する債務の消滅に関する行為」(新424条の3)が問題となろう。本問の代物弁済については、新424条の3第1項1号(代物弁済が支払不能時に行われること)、2号(債務者と受益者が通謀し他の債権者を害する意図で行われること)の両要件を充たすと言えようか。
なお改正により、旧424条1項の「法律行為」が単に「行為」となった(新424条1項)。このため弁済行為が詐害行為取消権の対象になることが明確になった。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)190頁以下(幡野弘樹執筆)。

2) 「上記事情を知らないCに時価で売却」。詐害行為取消権の理解については、「誰に何を請求するか」をめぐる対立がある。判例(大連判明治44年3月24日)はこの点につき、「受益者又は転得者」を相手に詐害行為取消権を行使すべきとしている。

本問では、転得者CはAB間の事情を知らないのであるから(424条1項但書)、受益者Bを詐害行為取消権の相手とする。前掲野村他101頁以下、内田貴『民法Ⅲ』初版(1996年、東大出版会)287頁以下。

【改正点】転得者に対する詐害行為取消権の要件(新424条の5)が新設された。本問では転得者Cは、AB間の事情を知らない(転得時、債務者のした行為が債権者を害することを知らない〔新424条の5第1号参照〕)のだから、Cに対する詐害行為取消権の行使は認められず、受益者Bのみが行使の相手方となる(詐害行為取消訴訟の被告についても明文化された〔前掲大連判明治44年判例を立法化。新424条の7、同1項1号参照〕)。前掲大村他196、199頁。

3) 「どのような対応をとればよいか」。「何を請求するか」の問題である。前記大連判判決は、詐害行為取消権を「債務者のした詐害行為を取り消すこと」と「それにより債務者の責任財産から逸出した財産の取戻し」と考えているが(前掲野村他102頁、内田288頁)、甲土地はBの物ではなく、かつCはABの事情を知らないのであるから、Xは甲土地の取戻しを請求できない。

本問ような「受益者悪意、転得者善意の場合」は、代物弁済を取り消し、受益者に対し目的物に代わる価格賠償を裁判(424条1項本文参照)で請求することになる。前掲内田285頁。

【改正点】「何を請求するか」の問題につき、債務者による詐害行為の取消しという点に変わりはないが(424条1項本文)、取消請求の内容に付き明文規定が設けられた(新424条の6。前掲大連判明治44年判例、大判昭和7年9月15日を立法化)。新規定によると、受益者Bに移転した財産の返還請求をするが、受益者による返還が困難な本件のような場合は、当該財産の「価額の償還の請求」(新424条の6第1項)をすることになる。前掲大村他198頁。

解答としては次のようになろうか。
「Xは詐害行為取消権に基づきBに対し、代物弁済を取り消し価格賠償を求める裁判上の請求をする。」(45文字)

【改正点】この解答文自体を変更する必要はないように思われる。

2020年6月18日木曜日

行政書士試験「債務引受」(2014-32)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 誤り。免責的債務引受は、債権者、原債務者、引受人の三者間での契約は勿論、債権者と引受人との間の契約でもこれをなし得る(大判大正10年5月9日)。原債務者は債務を免れる利益を受けるのであるから、原債務者を除外して引受契約をしても不都合はないというのがその理由である。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)205頁。

【改正点】従前、債務引受についての明文規定はなかったが、今回の改正で立法化が図られた。免責的債務引受は「債権者と引受人となる者との契約」によりすることができる(新472条2項。債務者の意思に反しても可)。なお「債務者と引受人となる者」による免責的債務引受契約について新472条3項参照。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)297頁(加毛明執筆)。

イ) 正しい。併存的債務引受は、債権者、原債務者、引受人の三者間での契約は勿論、債権者と引受人との間の契約でもこれをなし得るし、原債務者の意思に反しても可能である(通説、判例)。併存的債務引受は保証的性格を持つが、保証が主たる債務者の意思に反してもなし得ることとの均衡上(462条2項参照)、このように解されている。前掲野村他207-208頁。

【改正点】従前、債務引受についての明文規定はなかったが、今回の改正で立法化が図られた。併存的債務引受は「債権者と引受人となる者との契約」によりすることができる(新470条2項。債務者の意思に反しても可)。なお「債務者と引受人となる者」による併存的債務引受契約について新470条3項参照。前掲大村他編295頁。

ウ) 誤り。併存的債務引受の場合、原債務者の債務はそのまま存続し、その債務と同一の債務を引受人は負うことになるが、この両者の債務について判例は連帯債務と解している。前掲野村他208頁。

【改正点】原債務者と引受人は連帯債務の関係に立つ(新470条1項)。そのため引受人と債務者との法律関係には、新436条以下の規定が適用される。

エ) 正しい。譲渡人と承継人との間で契約上の地位を譲渡できるか。この点、売主や買主の地位の譲渡といったように、相手方の権利義務に与える影響が大きい場合は、売買契約の相手方の承認を必要とするというのが判例である(最判昭和30年9月29日)。前掲野村他210-211頁。

【改正点】「契約上の地位の移転」についても今回立法化が図られた。契約上の地位を譲渡するには、契約の一方当事者と第三者間での地位譲渡についての合意、及び譲渡される契約の相手方が譲渡を承諾することが必要となる(新539条の2)。前掲大村他編299頁。

オ) 誤り。賃借人が対抗要件(605条、借地借家法10条1項、31条1項)を具備していれば、賃借人の承諾なしに賃貸人の地位を移転し得るというのが判例である(最判昭和46年4月23日)。前掲野村他211頁。

【改正点】なし。

2020年6月12日金曜日

行政書士試験「債権の準占有者への弁済」(2014-33)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 正しい。準占有は本来、「自己のためにする意思」を以て財産権を行使する場合(205条)を指すが、このように債権者の「代理人」や「使者」と称する者への弁済も、債権の準占有の規定によるというのが判例である(最判昭和42年12月21日)。また善意無過失という主観的要件についての説明も正しい(最判昭和41年10月4日)。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)230頁。

【改正点】「債権の準占有者」についての規定(旧478条)が、「『受領権者』」としての外観を有する者への弁済」という規定に改められた(新478条)。受領権者の定義に注意(同括弧書)。

イ) 正しい。このような期限前の払戻も商慣習上満期の払戻に並ぶ弁済に該当し、478条の適用があるというのが判例である(最判昭和41年10月4日)。前掲野村他231頁。

【改正点】ア)参照。478条→新478条に変更。

ウ) 正しい。預金証書の所持人に、その預金債権と相殺する予定で貸し付けを行った場合にも、478条が類推適用されるというのが判例である(昭和48年3月27日)。前掲野村他231頁。

【改正点】ア)参照。478条→新478条に変更。

エ) 正しい。受取証書持参人は、弁済を受領する権限があったものとみなされるが(480条本文)、この受取証書は真正に作成されたものでなければならないので、この場合同条の適用はない(通説、大判明治41年1月3日)。但し「偽造」の受取証書に基づいて債権を行使し受領した場合、債権の準占有者への弁済として有効になる場合もある(大判昭和2年6月22日)。前掲野村他232頁。

【改正点】法改正により旧480条は削除された。新法の下では、受領権者ではない受取証書の持参人に対する弁済人の効力は、受取証書の真正偽造をとわず、新478条の適用によって判断されることなった。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)310頁(加毛明執筆)。

オ) 正しい。債権の二重譲渡においてこのような相当の理由がある場合、467条2項所定の対抗要件に付き劣後する譲受人に対してされた弁済についても、478条の適用があるというのが判例である(最判昭和61年4月11日)。

【改正点】なし。なおア)参照。478条→新478条に変更。

2020年2月20日木曜日

行政書士試験民法(2016-45)【条文知識問題】

 民法改正に伴い解説を改める。

2) 「抵当権が設定…その旨の登記がなされていた」。Aは抵当権付きの甲地を購入したということである。本問ではこの抵当権につき、Aは第三者弁済(民法474条)、代価弁済(378条)、抵当権消滅請求(379条)を行わないものとされている。そのため解答の際「これら以外でAが抵当権を消滅させる方法」を考えがちだが、先に述べた「契約」ということから「抵当権等がある場合における売主の担保責任」を思い出せたかが重要となる。

旧民法567条1項  売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。

抵当権等がある場合における売主の担保責任に関する旧567条1項は新570条になったが、旧567条1項(解除)と3項(損害賠償請求)の規定は新規定に受け継がれなかった。これはこの2つができないことになった、というわけではなく解除と損害賠償の一般原則に委ねればよいと解されたためである。大村敦志・道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)408頁(石川博康執筆)
つまり、旧規定と異なり抵当権が実行され所有権を失わない段階でも、AはBの債務不履行を理由に契約を解除、損害賠償請求できることとなった(541条、415条1項。Aが所有権を失った場合は542条に基づく解除になろう)。

解答としては次のようになろうか。
「Aは、抵当権が行使され甲地の所有権を失ったとき、契約の解除をすることができる。」(39文字)

問題自体は「どのようになったとき何を主張できるか」を聞いているので、抵当権が行使されない段階での解除、損賠償請求は解答として書きにくいと思われる。なお所有権を失い解除した場合、損害賠償の請求も可能なのはもちろんである。

なお新570条の内容を解答として記述するのは適切ではない。新570条は、買主が「費用を支出してその不動産を保存したとき」費用償還を請求できると定めるが、この費用を支出して、とは第三者弁済、代価弁済、抵当権消滅請求を指すからである。藤岡他『民法Ⅳ債権各論』第3版補訂(2009年、有斐閣)76頁。

本問については、潮見佳男『民法(全)』第2版(2019年、有斐閣)396ー397頁参照。

2020年2月9日日曜日

行政書士試験「債務不履行」(2016-33)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 正しい。412条2項。

【改正点】改正に伴い誤りとなる。新412条2項は、「債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う」となったためである。

2) 正しい。債務不履行成立のための「帰責事由」は、債務者が立証する。前掲野村他45-46頁。

【改正点】なし。

3) 誤り。よってこれが正解である。本肢のように解する説もあるが、この場合過失の有無にかかわらず賃借人は賃貸人に損害賠償責任を負うとするのが判例である(大判昭和4年6月19日)。

【改正点】なし。

4) 正しい。658条2項、105条1項。

【改正点】改正に伴い誤りとなる。新法の下でも「受寄者が寄託者の承諾を得て寄託物を第三者に保管」させることは可能である(新658条2項。やむを得ない事由がある場合も可〔改正により追加〕)。問題は当該第三者の過失により寄託物が損傷した場合だが、この場合は履行補助者の過失についての原則に従い処理される。旧658条2項は旧105条(新104条)を準用し上の「場合」を処理していたが、この準用規定は削除されたためである。大村敦志・道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)452ー453頁(石川博康執筆)

5) 最判昭和37年11月16日。前掲野村他75頁。なお富喜丸事件判決(大連判大正15年5月22日)参照。

【改正点】なし。

幸徳秋水『帝国主義』2

 「第3章 軍国主義を論ず」 軍国主義の「原因と目的」 「防御以外」「保護 以外にあらざるべからず 」。  軍備拡張の原因 「一種の狂熱」「虚誇の心」「 好戦的愛国心のみ 」。  甲「平和を希う」乙が侵攻しようとしている、乙「平和を希う」甲が侵攻しようとしている:「 世界各国皆同...