2020年2月20日木曜日

行政書士試験民法(2016-45)【条文知識問題】

 民法改正に伴い解説を改める。

2) 「抵当権が設定…その旨の登記がなされていた」。Aは抵当権付きの甲地を購入したということである。本問ではこの抵当権につき、Aは第三者弁済(民法474条)、代価弁済(378条)、抵当権消滅請求(379条)を行わないものとされている。そのため解答の際「これら以外でAが抵当権を消滅させる方法」を考えがちだが、先に述べた「契約」ということから「抵当権等がある場合における売主の担保責任」を思い出せたかが重要となる。

旧民法567条1項  売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。

抵当権等がある場合における売主の担保責任に関する旧567条1項は新570条になったが、旧567条1項(解除)と3項(損害賠償請求)の規定は新規定に受け継がれなかった。これはこの2つができないことになった、というわけではなく解除と損害賠償の一般原則に委ねればよいと解されたためである。大村敦志・道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)408頁(石川博康執筆)
つまり、旧規定と異なり抵当権が実行され所有権を失わない段階でも、AはBの債務不履行を理由に契約を解除、損害賠償請求できることとなった(541条、415条1項。Aが所有権を失った場合は542条に基づく解除になろう)。

解答としては次のようになろうか。
「Aは、抵当権が行使され甲地の所有権を失ったとき、契約の解除をすることができる。」(39文字)

問題自体は「どのようになったとき何を主張できるか」を聞いているので、抵当権が行使されない段階での解除、損賠償請求は解答として書きにくいと思われる。なお所有権を失い解除した場合、損害賠償の請求も可能なのはもちろんである。

なお新570条の内容を解答として記述するのは適切ではない。新570条は、買主が「費用を支出してその不動産を保存したとき」費用償還を請求できると定めるが、この費用を支出して、とは第三者弁済、代価弁済、抵当権消滅請求を指すからである。藤岡他『民法Ⅳ債権各論』第3版補訂(2009年、有斐閣)76頁。

本問については、潮見佳男『民法(全)』第2版(2019年、有斐閣)396ー397頁参照。

原田尚彦「裁量権収縮論」

 「一 法治行政と行政便宜主義」  行政庁は、公共の安全と秩序を保持する責任を負い、「そのために国民の権利自由に規制を加える権限を有している」。そしてこの権限は、「行政法規の授権するところに従い、法規にそって行使しなければならない」( 法治行政の原則 )。但し、授権がある場合でも...