2020年6月25日木曜日

行政書士試験「詐害行為取消権」(2014-45)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 「Bに優先的な満足-中略-代物弁済としてBに譲渡」。本問では「詐害行為取消権」(新424条)が問題になる。多くの判例は、債権者による弁済の強要といった場合を除き(最判昭和45年11月19日)、代物弁済の詐害行為性を肯定する(大判昭和16年2月10日。相当代価での代物弁済も同様〔大判大正8年7月11日〕)。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)109-110頁。

【改正点】詐害行為取消権(新424条)については大幅に改正が行われた。特に破産法との関係で詐害行為取消権の類型化がなされた。本問では、「特定債権者に対する債務の消滅に関する行為」(新424条の3)が問題となろう。本問の代物弁済については、新424条の3第1項1号(代物弁済が支払不能時に行われること)、2号(債務者と受益者が通謀し他の債権者を害する意図で行われること)の両要件を充たすと言えようか。
なお改正により、旧424条1項の「法律行為」が単に「行為」となった(新424条1項)。このため弁済行為が詐害行為取消権の対象になることが明確になった。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)190頁以下(幡野弘樹執筆)。

2) 「上記事情を知らないCに時価で売却」。詐害行為取消権の理解については、「誰に何を請求するか」をめぐる対立がある。判例(大連判明治44年3月24日)はこの点につき、「受益者又は転得者」を相手に詐害行為取消権を行使すべきとしている。

本問では、転得者CはAB間の事情を知らないのであるから(424条1項但書)、受益者Bを詐害行為取消権の相手とする。前掲野村他101頁以下、内田貴『民法Ⅲ』初版(1996年、東大出版会)287頁以下。

【改正点】転得者に対する詐害行為取消権の要件(新424条の5)が新設された。本問では転得者Cは、AB間の事情を知らない(転得時、債務者のした行為が債権者を害することを知らない〔新424条の5第1号参照〕)のだから、Cに対する詐害行為取消権の行使は認められず、受益者Bのみが行使の相手方となる(詐害行為取消訴訟の被告についても明文化された〔前掲大連判明治44年判例を立法化。新424条の7、同1項1号参照〕)。前掲大村他196、199頁。

3) 「どのような対応をとればよいか」。「何を請求するか」の問題である。前記大連判判決は、詐害行為取消権を「債務者のした詐害行為を取り消すこと」と「それにより債務者の責任財産から逸出した財産の取戻し」と考えているが(前掲野村他102頁、内田288頁)、甲土地はBの物ではなく、かつCはABの事情を知らないのであるから、Xは甲土地の取戻しを請求できない。

本問ような「受益者悪意、転得者善意の場合」は、代物弁済を取り消し、受益者に対し目的物に代わる価格賠償を裁判(424条1項本文参照)で請求することになる。前掲内田285頁。

【改正点】「何を請求するか」の問題につき、債務者による詐害行為の取消しという点に変わりはないが(424条1項本文)、取消請求の内容に付き明文規定が設けられた(新424条の6。前掲大連判明治44年判例、大判昭和7年9月15日を立法化)。新規定によると、受益者Bに移転した財産の返還請求をするが、受益者による返還が困難な本件のような場合は、当該財産の「価額の償還の請求」(新424条の6第1項)をすることになる。前掲大村他198頁。

解答としては次のようになろうか。
「Xは詐害行為取消権に基づきBに対し、代物弁済を取り消し価格賠償を求める裁判上の請求をする。」(45文字)

【改正点】この解答文自体を変更する必要はないように思われる。

2020年6月18日木曜日

行政書士試験「債務引受」(2014-32)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 誤り。免責的債務引受は、債権者、原債務者、引受人の三者間での契約は勿論、債権者と引受人との間の契約でもこれをなし得る(大判大正10年5月9日)。原債務者は債務を免れる利益を受けるのであるから、原債務者を除外して引受契約をしても不都合はないというのがその理由である。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)205頁。

【改正点】従前、債務引受についての明文規定はなかったが、今回の改正で立法化が図られた。免責的債務引受は「債権者と引受人となる者との契約」によりすることができる(新472条2項。債務者の意思に反しても可)。なお「債務者と引受人となる者」による免責的債務引受契約について新472条3項参照。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)297頁(加毛明執筆)。

イ) 正しい。併存的債務引受は、債権者、原債務者、引受人の三者間での契約は勿論、債権者と引受人との間の契約でもこれをなし得るし、原債務者の意思に反しても可能である(通説、判例)。併存的債務引受は保証的性格を持つが、保証が主たる債務者の意思に反してもなし得ることとの均衡上(462条2項参照)、このように解されている。前掲野村他207-208頁。

【改正点】従前、債務引受についての明文規定はなかったが、今回の改正で立法化が図られた。併存的債務引受は「債権者と引受人となる者との契約」によりすることができる(新470条2項。債務者の意思に反しても可)。なお「債務者と引受人となる者」による併存的債務引受契約について新470条3項参照。前掲大村他編295頁。

ウ) 誤り。併存的債務引受の場合、原債務者の債務はそのまま存続し、その債務と同一の債務を引受人は負うことになるが、この両者の債務について判例は連帯債務と解している。前掲野村他208頁。

【改正点】原債務者と引受人は連帯債務の関係に立つ(新470条1項)。そのため引受人と債務者との法律関係には、新436条以下の規定が適用される。

エ) 正しい。譲渡人と承継人との間で契約上の地位を譲渡できるか。この点、売主や買主の地位の譲渡といったように、相手方の権利義務に与える影響が大きい場合は、売買契約の相手方の承認を必要とするというのが判例である(最判昭和30年9月29日)。前掲野村他210-211頁。

【改正点】「契約上の地位の移転」についても今回立法化が図られた。契約上の地位を譲渡するには、契約の一方当事者と第三者間での地位譲渡についての合意、及び譲渡される契約の相手方が譲渡を承諾することが必要となる(新539条の2)。前掲大村他編299頁。

オ) 誤り。賃借人が対抗要件(605条、借地借家法10条1項、31条1項)を具備していれば、賃借人の承諾なしに賃貸人の地位を移転し得るというのが判例である(最判昭和46年4月23日)。前掲野村他211頁。

【改正点】なし。

2020年6月12日金曜日

行政書士試験「債権の準占有者への弁済」(2014-33)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 正しい。準占有は本来、「自己のためにする意思」を以て財産権を行使する場合(205条)を指すが、このように債権者の「代理人」や「使者」と称する者への弁済も、債権の準占有の規定によるというのが判例である(最判昭和42年12月21日)。また善意無過失という主観的要件についての説明も正しい(最判昭和41年10月4日)。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)230頁。

【改正点】「債権の準占有者」についての規定(旧478条)が、「『受領権者』」としての外観を有する者への弁済」という規定に改められた(新478条)。受領権者の定義に注意(同括弧書)。

イ) 正しい。このような期限前の払戻も商慣習上満期の払戻に並ぶ弁済に該当し、478条の適用があるというのが判例である(最判昭和41年10月4日)。前掲野村他231頁。

【改正点】ア)参照。478条→新478条に変更。

ウ) 正しい。預金証書の所持人に、その預金債権と相殺する予定で貸し付けを行った場合にも、478条が類推適用されるというのが判例である(昭和48年3月27日)。前掲野村他231頁。

【改正点】ア)参照。478条→新478条に変更。

エ) 正しい。受取証書持参人は、弁済を受領する権限があったものとみなされるが(480条本文)、この受取証書は真正に作成されたものでなければならないので、この場合同条の適用はない(通説、大判明治41年1月3日)。但し「偽造」の受取証書に基づいて債権を行使し受領した場合、債権の準占有者への弁済として有効になる場合もある(大判昭和2年6月22日)。前掲野村他232頁。

【改正点】法改正により旧480条は削除された。新法の下では、受領権者ではない受取証書の持参人に対する弁済人の効力は、受取証書の真正偽造をとわず、新478条の適用によって判断されることなった。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)310頁(加毛明執筆)。

オ) 正しい。債権の二重譲渡においてこのような相当の理由がある場合、467条2項所定の対抗要件に付き劣後する譲受人に対してされた弁済についても、478条の適用があるというのが判例である(最判昭和61年4月11日)。

【改正点】なし。なおア)参照。478条→新478条に変更。

幸徳秋水『帝国主義』2

 「第3章 軍国主義を論ず」 軍国主義の「原因と目的」 「防御以外」「保護 以外にあらざるべからず 」。  軍備拡張の原因 「一種の狂熱」「虚誇の心」「 好戦的愛国心のみ 」。  甲「平和を希う」乙が侵攻しようとしている、乙「平和を希う」甲が侵攻しようとしている:「 世界各国皆同...