1) 「Bに優先的な満足-中略-代物弁済としてBに譲渡」。本問では「詐害行為取消権」(新424条)が問題になる。多くの判例は、債権者による弁済の強要といった場合を除き(最判昭和45年11月19日)、代物弁済の詐害行為性を肯定する(大判昭和16年2月10日。相当代価での代物弁済も同様〔大判大正8年7月11日〕)。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)109-110頁。
【改正点】詐害行為取消権(新424条)については大幅に改正が行われた。特に破産法との関係で詐害行為取消権の類型化がなされた。本問では、「特定債権者に対する債務の消滅に関する行為」(新424条の3)が問題となろう。本問の代物弁済については、新424条の3第1項1号(代物弁済が支払不能時に行われること)、2号(債務者と受益者が通謀し他の債権者を害する意図で行われること)の両要件を充たすと言えようか。
なお改正により、旧424条1項の「法律行為」が単に「行為」となった(新424条1項)。このため弁済行為が詐害行為取消権の対象になることが明確になった。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)190頁以下(幡野弘樹執筆)。
2) 「上記事情を知らないCに時価で売却」。詐害行為取消権の理解については、「誰に何を請求するか」をめぐる対立がある。判例(大連判明治44年3月24日)はこの点につき、「受益者又は転得者」を相手に詐害行為取消権を行使すべきとしている。
本問では、転得者CはAB間の事情を知らないのであるから(424条1項但書)、受益者Bを詐害行為取消権の相手とする。前掲野村他101頁以下、内田貴『民法Ⅲ』初版(1996年、東大出版会)287頁以下。
【改正点】転得者に対する詐害行為取消権の要件(新424条の5)が新設された。本問では転得者Cは、AB間の事情を知らない(転得時、債務者のした行為が債権者を害することを知らない〔新424条の5第1号参照〕)のだから、Cに対する詐害行為取消権の行使は認められず、受益者Bのみが行使の相手方となる(詐害行為取消訴訟の被告についても明文化された〔前掲大連判明治44年判例を立法化。新424条の7、同1項1号参照〕)。前掲大村他196、199頁。
3) 「どのような対応をとればよいか」。「何を請求するか」の問題である。前記大連判判決は、詐害行為取消権を「債務者のした詐害行為を取り消すこと」と「それにより債務者の責任財産から逸出した財産の取戻し」と考えているが(前掲野村他102頁、内田288頁)、甲土地はBの物ではなく、かつCはABの事情を知らないのであるから、Xは甲土地の取戻しを請求できない。
本問ような「受益者悪意、転得者善意の場合」は、代物弁済を取り消し、受益者に対し目的物に代わる価格賠償を裁判(424条1項本文参照)で請求することになる。前掲内田285頁。
【改正点】「何を請求するか」の問題につき、債務者による詐害行為の取消しという点に変わりはないが(424条1項本文)、取消請求の内容に付き明文規定が設けられた(新424条の6。前掲大連判明治44年判例、大判昭和7年9月15日を立法化)。新規定によると、受益者Bに移転した財産の返還請求をするが、受益者による返還が困難な本件のような場合は、当該財産の「価額の償還の請求」(新424条の6第1項)をすることになる。前掲大村他198頁。
解答としては次のようになろうか。
「Xは詐害行為取消権に基づきBに対し、代物弁済を取り消し価格賠償を求める裁判上の請求をする。」(45文字)
【改正点】この解答文自体を変更する必要はないように思われる。
解答としては次のようになろうか。
「Xは詐害行為取消権に基づきBに対し、代物弁済を取り消し価格賠償を求める裁判上の請求をする。」(45文字)
【改正点】この解答文自体を変更する必要はないように思われる。