2020年6月18日木曜日

行政書士試験「債務引受」(2014-32)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 誤り。免責的債務引受は、債権者、原債務者、引受人の三者間での契約は勿論、債権者と引受人との間の契約でもこれをなし得る(大判大正10年5月9日)。原債務者は債務を免れる利益を受けるのであるから、原債務者を除外して引受契約をしても不都合はないというのがその理由である。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)205頁。

【改正点】従前、債務引受についての明文規定はなかったが、今回の改正で立法化が図られた。免責的債務引受は「債権者と引受人となる者との契約」によりすることができる(新472条2項。債務者の意思に反しても可)。なお「債務者と引受人となる者」による免責的債務引受契約について新472条3項参照。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)297頁(加毛明執筆)。

イ) 正しい。併存的債務引受は、債権者、原債務者、引受人の三者間での契約は勿論、債権者と引受人との間の契約でもこれをなし得るし、原債務者の意思に反しても可能である(通説、判例)。併存的債務引受は保証的性格を持つが、保証が主たる債務者の意思に反してもなし得ることとの均衡上(462条2項参照)、このように解されている。前掲野村他207-208頁。

【改正点】従前、債務引受についての明文規定はなかったが、今回の改正で立法化が図られた。併存的債務引受は「債権者と引受人となる者との契約」によりすることができる(新470条2項。債務者の意思に反しても可)。なお「債務者と引受人となる者」による併存的債務引受契約について新470条3項参照。前掲大村他編295頁。

ウ) 誤り。併存的債務引受の場合、原債務者の債務はそのまま存続し、その債務と同一の債務を引受人は負うことになるが、この両者の債務について判例は連帯債務と解している。前掲野村他208頁。

【改正点】原債務者と引受人は連帯債務の関係に立つ(新470条1項)。そのため引受人と債務者との法律関係には、新436条以下の規定が適用される。

エ) 正しい。譲渡人と承継人との間で契約上の地位を譲渡できるか。この点、売主や買主の地位の譲渡といったように、相手方の権利義務に与える影響が大きい場合は、売買契約の相手方の承認を必要とするというのが判例である(最判昭和30年9月29日)。前掲野村他210-211頁。

【改正点】「契約上の地位の移転」についても今回立法化が図られた。契約上の地位を譲渡するには、契約の一方当事者と第三者間での地位譲渡についての合意、及び譲渡される契約の相手方が譲渡を承諾することが必要となる(新539条の2)。前掲大村他編299頁。

オ) 誤り。賃借人が対抗要件(605条、借地借家法10条1項、31条1項)を具備していれば、賃借人の承諾なしに賃貸人の地位を移転し得るというのが判例である(最判昭和46年4月23日)。前掲野村他211頁。

【改正点】なし。

原田尚彦「裁量権収縮論」

 「一 法治行政と行政便宜主義」  行政庁は、公共の安全と秩序を保持する責任を負い、「そのために国民の権利自由に規制を加える権限を有している」。そしてこの権限は、「行政法規の授権するところに従い、法規にそって行使しなければならない」( 法治行政の原則 )。但し、授権がある場合でも...