2020年7月2日木曜日

行政書士試験「他人物売買」(2014-46)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

旧法下における担保責任制度についても大幅に改正された。本問については結果、問題自体が通用しないものになった。つまり本問自体は、試験勉強の必要がないということである。

【改正点】担保責任は、まず、法定責任説と契約責任説担保責任=債務不履行の特則とする説の論争に終止符が打たれ、後説を前提に「物、権利に関する契約不適合を理由とする債務不履行責任」(新562条以下。権利については新565条による新562ー新564条の準用)と位置づけられることになった。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)398ー403頁(石川博康執筆)。

1) 「甲土地はAが所有-中略-属しないことを知らなかった」。XY間で「甲土地売買契約」が結ばれたが、この甲土地は「他人物」でありかつ他人物ということにつきXが「善意」という事情がある。
2) 「甲土地の売却を申し入れた-中略-移転することができなかった」。他人物を目的物とする契約も有効であり、この場合「売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う」(560条)というのが民法の規定であり、売主Xはこの義務を履行しようとしたができなかったということになる。

【改正点】甲土地売買契約=他人物売買契約を締結すること自体は新法の下でも可能である。Xが新561条(旧560条)の義務を果たせば問題ない。なお新560条に注意。

3) 本問は、売主Xが上の義務を履行できず「解除権」を行使する場合の要件を(562条)、買主Yの主観的状態に応じて論ぜよということである。

【改正点】旧562条は買主の善意、悪意に応じて他人物売買の法的効果を変えていたが(故に解答で「Yの主観事情に応じて論じよ」とされている)、改正により旧562条は削除された。
そして前述の通り担保責任は「物、権利に関する契約不適合を理由とする債務不履行責任」という観点から再構成されたのだが、本問のような「権利の全部が他人に属する場合」には、新しく整理された新562条ー新564条の規定は適用されない(権利の一部が他人に属する場合に適用される)
新法の下では、このような場合は、「債務不履行の一般規定の適用によって処理されることが予想されている」(前掲大村他403頁。本問では履行不能で処理するということであろう。なお目的物が他人物であることにつき、売主買主共に善意か悪意かは問題とならない)。
但し実際の処理としては「契約不適合」の条文を用いた場合と処理はそれほど大きく異なるものではない、と解されている。潮見佳男『民法(全)』第2版(2019年、有斐閣)397頁。

3) 本問は、売主Xが上の義務を履行できず「解除権」を行使する場合の要件を(562条)、買主Yの主観的状態に応じて論ぜよということである。

【改正点】本問における解除権は新法の下では新542条をもとに行使していくことになろうか。

丸山眞男「日本の思想」

   「思想が対決と蓄積の上に歴史的に構造化され」ず、ある論争が「共有財産となって、次の時代に受け継がれて」ゆかないという伝統が、日本の論争史にはある。論争において、「これだけの問題は解明もしくは整理され」何がそうでないか「けじめがいっこうにはっきりしないままたち消えになってゆく...