2020年8月29日土曜日

行政書士試験「無償契約」(2012-32)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 正しい。552条。

【改正点】なし

2) 誤り。贈与者は、贈与の目的物についての瑕疵について責任を負わないのが原則であるが、贈与者が瑕疵の存在を知りそれを受贈者に告げなかった場合は、担保責任を負う(551条1項)。

【改正点】旧551条1項は削除された。この点新法(新551条)は、「贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する」としたが、特定時の状態で引き渡せばそれで足り、瑕疵担保や債務不履行責任を負わないというのがこの条文の趣旨である。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)418ー419頁参照(石川博康執筆)。

3) 誤り。必要費、有益費の説明は正しい(前者につき595条1項、後者につき595条2項、583条2項。なお196条参照)。但し有益費の償還につき裁判所は相当の期限を付与することができる(583条2項但書)。

【改正点】なし

4) 誤り。受任者は、有償無償問わず善管注意義務を以て委任事務を処理しなければならない(644条)。

【改正点】なし

5) 誤り。無償受寄者は、寄託物につき自己の財産に対するのと同一の注意を以て寄託物を保管する義務を負う(659条)。

【改正点】旧659条の内容は、新法では659条に規定されている。新規定では主語が「無報酬の受寄者」に改められた。

行政書士試験「担保責任」(2012-31)【条文知識、理論問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 誤り。この場合買主は、「善意悪意を問わず」契約を解除し得るが(561条)、この解除権の行使には、短期の期間制限(除斥期間)はない(10年の消滅時効にはかかる)。藤岡-磯村-浦河-松本康宏他『民法Ⅳ』第3版補訂(2009年、有斐閣)74頁。

【改正点】担保責任関連も大幅に改正された。本肢のような「全部他人物」売買における、他人物の売主がその義務(新560条)を果たせない場合の処理は、「債務不履行の一般規定をそのまま適用」することになった(新562ー564条の規定は全部他人物の事案には適用されない)。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)403頁(石川博康執筆)。よってAは善意悪意を問わず、当該契約の解除と損害賠償請求をなし得る(新541条、415条)。

2) 誤り。この場合善意の売主Bは、買主Aが「悪意」であれば「単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができる」(562条2項)のである。買主Aが「善意」の場合、Bは損害を賠償して解除する必要がある。前掲藤岡他74頁。

【改正点】旧562条2項は削除された。本肢については、前肢改正点の説明参照。旧法と異なり、買主の善意悪意と売主側の「解除権の行使の可否、損害賠償の要否」はつながってこないことに注意。

3) 誤り。「悪意」の場合は契約の時から1年以内に限り、Bに対して、その不足する部分の割合に応じて代金の減額請求(563条1項)をすることができるのである。善意の場合は、代金減額請求を行使できる期間の起算点が異なる(564条)。

【改正点】「一部他人物」や「契約不適合」事案における買主の代金減額請求権行使については、善意悪意を問わなくなっている点に注意(新563条1項、なお同3項注意。新565条。また1年の行使期間制限については、新566条参照。

4) 正しい。565、563、564条。

【改正点】改正に伴い「誤り」の選択肢となる。前肢解説にあるように、旧法と異なり代金減額請求権の行使は悪意者でも可能となった(新565条、新563条1項参照)。代金減額請求、損害賠償、解除の期間制限については新566条参照。

5) 誤り。当該抵当権の行使によりAが土地の所有権を失った場合、Aの「善意悪意を問わず」契約を解除できる。また損害賠償についても買主の「善意悪意を問わない」(567条1、3項)。

【改正点】旧567条の内容は、新法では570条に規定されているが、旧567条1項及び旧同条3項に相当する新法の規定は存在しない。抵当権実行に伴う所有権喪失に伴う解除、損害賠償については、それぞれの一般原則(415条、新541条)に委ねられている。前掲大村他408頁(石川博康執筆)。新565条、新564条参照。

2020年8月23日日曜日

行政書士試験「代理人と使者」(2012-28)【条文知識、理論問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 誤り。代理人としての地位は委任契約ばかりでなく、請負や雇用によっても発生する。前掲山田他164-165頁。

【改正点】なし。

2) 誤り。頻出の肢である。代理人に行為能力は不要である(102条)。使者についての説明は正しい。前掲山田他161頁。

【改正点】旧102条の内容は、新法では102条本文に規定されている。

3) 正しい。101条参照。前掲山田他161頁。

【改正点】なし。

4) 誤り。代理人による権限逸脱の場合、表見代理の成立(110条)や本人の追認(116条)により代理行為が有効になる場合もある。一方使者が本人の完了した意思表示と異なる意思表示を相手方に伝えた場合は、本人の錯誤(95条)と処理されるので、この場合意思表示が無効となる余地がないというのは誤りである(95条但書参照)。前掲山田他161頁。

【改正点】錯誤に基づく法律行為の効果は「無効」から「取消」に変更された(旧95条本文、新95条1項)。解説文は、「この場合意思表示が(取消の結果)無効となる余地がないというのは誤りである」とすると正しくなろう。

5) 誤り。任意代理の場合、本人の許諾がある場合かやむを得ない事由がなければ復代理人を選任できないが(104条)、法定代理の場合は自由に選任できる(106条)。前掲山田他167-168頁。

【改正点】法定代理(旧106条)については、新105条で規定されている。

2020年8月11日火曜日

行政書士試験「組合」(2013-33)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 誤り。組合の「常務」については、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる(670条3項本文)。

【改正点】旧670条3項本文の内容は、新法では670条5項本文に規定されている。

2) 誤り。組合の業務の執行につき業務執行者が複数いる場合は、業務執行者の過半数で決する(670条2項)。よってこの場合ABの合意があれば決することは可能である。

【改正点】旧670条2項の内容は、新法では670条3項に規定されている。

3) 誤り。組合の存続期間を定めない場合、いつでも脱退できるのが原則である。但しこの原則は、組合が不利な時期には脱退できないという例外があるが、それでもやむを得ない事由がある場合は脱退が認められる(678条)。

【改正点】なし。

4) 誤り。組合員の脱退に関する678条は強行規定であるので、本肢のような「やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約」は無効とするのが判例である(最判平成11年2月23日)。藤岡-磯村-浦河-松本『民法Ⅳ』第3版補訂(2009年、有斐閣)204頁。

【改正点】なし

5) 正しい。この場合共有についての252条但書を適用し、各組合員単独による当該第三者への抹消登記請求を肯定するのが判例である(最判昭和33年7月22日)。前掲藤岡他202頁。

【改正点】なし。

2020年8月10日月曜日

行政書士試験「解除」(2013-31)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 誤り。当該建物は「Aの過失」により焼失しているので、危険負担ではなく債務不履行(履行不能)が問題となる。そして履行不能の場合、不能という性質上解除権の行使(543条)について、催告や履行期の到来は不要と解されている。藤岡-磯村-浦河-松本『民法Ⅳ』第3版補訂(2009年、有斐閣)44頁。

【改正点】新法では、無催告解除の類型が法定化されている(新542条)。旧543条の内容は、新542条1項1号(全部不能)と新542条2項1号(一部不能)において規定されている。

イ) 誤り。引渡期限が来てもAが当該建物を引き渡していないのだから、履行遅滞(412条)が問題となり得る。履行遅滞の場合、債権者は相当期間を定めた履行の催告の後解除権を行使することになるが(541条)、相当期間を定めていない催告をした場合でも、相当期間たてば解除はできると解されている(改めての催告は不要である)。前掲藤岡他43頁。

【改正点】なし

ウ) 正しい。544条1項。

【改正点】なし。

エ) 誤り。解除の結果として第三者Cの権利を害することはできないが(545条1項但書)、判例はC(解除前の第三者)がこの保護を受けるには対抗要件としての登記が必要とする(大判大正10年5月17日)。前掲藤岡他50頁。

【改正点】なし

オ) 正しい。解除権行使の結果、当事者は原状回復義務を負うことになるので(544条1項)、物(自動車)が給付されていればこれを返還しなければならず、さらに545条2項との均衡上物の使用利益も返還しなければならないからである。前掲藤岡他49頁。

【改正点】明文がなかった使用利益の返還について規定が設けられた(新545条3項)。

2020年8月8日土曜日

行政書士試験「賃貸借」(2013-32)【条文知識問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア)イ)エ)オ)は改正点なし。

ウ) 誤り。「第三者の弁済」が問題となる事例である。この場合Cが弁済について利害関係のない第三者である場合、Aの意思に反してまで賃料をBに支払うことはできないが、この事例のような、借地上の建物の賃借人の地代の弁済については、法律上の利害関係があるとするのが判例である(昭和63年7月1日)。よってCはAに無断でも土地賃料の支払をBになし得る(474条1項但書に言う「反対の意思表示」の存在も読み取れない)。

【改正点】旧474条2項「利害関係を有しない第三者」という文言が、「正当な利益を有する者でない第三者」に改められた(新474条2項)

2020年8月5日水曜日

行政書士試験「詐害行為取消権」(2013-30)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 誤り。判例は、遺産分割は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であり、財産権を目的とする法律行為にあたるとしている(最判平成11年6月11日)。つまり詐害行為取消権の対象になる。

【改正点】新法は、旧424条1項に規定されていた「法律行為の取消し」を「行為の取消し」(新424条1項)に改めた。これは従前、厳密な意味で法律行為ではない弁済等も詐害行為取消権の対象としてきたことに対応する。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)185ー186頁(幡野弘樹執筆)。

2) 正しい。最判昭和49年9月20日である。野村-栗田-池田-永田『民法Ⅲ』第2版補訂(1999年、有斐閣)104-105頁。

【改正点】なし

3) 誤り。この場合、原則詐害行為取消権の対象にならないが、768条3項の趣旨に反し不相当に過大であり、財産分与に仮託してなされたような財産の処分と言えるような特段の事情がある場合は、対象になるというのが判例である(最判昭和58年12月19日)。前掲野村他104-105頁。

【改正点】なし。なお新424条の4参照。

4) 誤り。詐害行為取消権の範囲は原則債権者を害する程度、即ち債権額である(大判明治36年12月7日)。しかし詐害行為の目的物が不可分の場合、その目的物が債権額を超える場合でも、詐害行為を全部取消し得る(最判昭和30年10月11日)。例えば債権額<不動産価額の場合であっても、債権保全のため当該不動産の贈与行為全部を取消し得る。前掲野村他112-113頁。

【改正点】前掲大判明治36年判例について明文化がなされた(新424条の8)。前掲大村他200頁。

5) 誤り。詐害行為取消権を行使した債権者は、取消に基づいて返還すべき財産が動産や金銭である場合、債務者ではなく自己に引渡しを求める事ができるというのが判例である(大判大正10年6月18日)。前掲野村他114頁。

【改正点】前掲大判大正10年判例について明文化がなされた(新424条の9)。
.

2020年8月3日月曜日

行政書士試験「錯誤」(2013-27)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

ア) 誤り。「要素の錯誤」は、「因果関係」と「重要性」の2要素で判断される。前者は錯誤がなければ表意者は意思表示をしなかったということである。また後者は、当該錯誤が一般取引の通念に照らし重要な部分についての錯誤であること、を意味する。内田貴『民法Ⅰ』第2版(1999年、東大出版会)67頁。大判大正3年12月15日。

【改正点】新法では、旧95条に規定されていた「要素の錯誤」(解説文中の「重要性」)について具体化が図られた。つまり、「錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」(新95条1項本文)とされた。なお解説文中の「因果関係」についての説明は新法でも妥当すると思われる。

イ) 誤り。人違いの錯誤は、「売買」においては一般的に錯誤にならない(大判大正8年12月16日。但し不動産売買において錯誤になるとされた事案として、最判昭和29年2月12日)。一方「委任」においては相手が誰かは重要な意味を持つ。錯誤を認めた事案として大判昭和10年12月13日。山田-河内-安永-松久『民法Ⅰ』第3版補訂(2007年、有斐閣)133頁。

【改正点】なし

ウ) 誤り。動機の錯誤は、動機が相手方に表示され意思表示の内容になった場合、要素の錯誤とし得るが(大判大正3年12月15日)、動機の表示は黙示のものでもよい(最判平成1年9月14日)。前掲内田65頁。

【改正点】「動機の錯誤」についての判例法理が明文化された。つまり、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(新95条1項1号)は、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り」取消すことができる(新95条2項)、とされた(新95条1項本文の「重要性」要件も具備しなければならない)。大村敦志、道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)20頁(角田美穂子執筆)。

エ) 正しい。「第三者」による錯誤無効の主張は許されないというのが判例だが(最判昭和40年9月10日)、本肢のように債権保全の必要性があり表意者が意思表示の瑕疵を認めている場合、例外として第三者からの錯誤無効の主張を認めている(最判昭和45年3月26日)。前掲内田71-73頁。

【改正点】従前、錯誤に基づく意思表示は「無効」とされていたが、新法では「取消し」できるものに改められた(新95条1項本文)。これは前掲昭和40年判例で示された立場即ち、「『相対的無効』『取消的無効』と説明してきたところを正面から『取消し』と規定するものである」。前掲大村他23頁。なお前掲昭和45年判例は、新法の下では妥当しなくなると思われる(第三者は、錯誤表意者の取消権を代位行使することになろうか)。

オ) 正しい。前掲内田67-68頁。大判大正7年12月3日。

【改正点】錯誤の効果が改正されたことに注意(新95条3項、前肢解説参照)。主張立証についての説明は新法でも妥当すると思われる。

丸山眞男「日本の思想」

   「思想が対決と蓄積の上に歴史的に構造化され」ず、ある論争が「共有財産となって、次の時代に受け継がれて」ゆかないという伝統が、日本の論争史にはある。論争において、「これだけの問題は解明もしくは整理され」何がそうでないか「けじめがいっこうにはっきりしないままたち消えになってゆく...