2020年10月29日木曜日

行政書士試験「契約総合」(2011-32)【判例問題】

民法改正に伴い解説に補足する。

1) 正しい。忘恩行為が問題となる事案であるが、判例は、贈与の見返りとしての扶養義務という負担の不履行を理由に、贈与契約の解除を認めた(最判昭和53年2月17日。但し判例は忘恩行為構成ではなく、負担付贈与構成をとり、553条が準用する541条による解除を認めた)。藤岡-磯村-浦河-松本他『民法Ⅳ』第3版補訂(2009年、有斐閣)58頁。

【改正点】なし。

2) 誤り。よってこれが正解である。民法557条は、「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる」と規定するが、ここでの問題は着手した側が、未だ着手していない側に向かって解除できるかである。判例はこの点肯定的判断をしている(最大判昭和40年11月24日)。前掲藤岡他70頁。

【改正点】あり。この肢が「誤り」である点に変更はないが、解説を次のように変更する。
民法旧557条は、「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは」「契約の解除をすることができる」と規定していたが、これとの関係で、着手した側が未だ着手していない側に向かって解除できるかが問題となった(判例は肯定する〔最大判昭和40年11月24日〕)。現行の新557条(同条1項但書注意)は、この大法廷判決を明文化したものである。

3) 正しい。信頼関係法理である。最判28年9月25日、前掲藤岡他129頁。

【改正点】なし

4) 正しい。委任事務が「受任者の利益のためにもなされた場合」、651条による解除を認めないのが判例であるが(大判大正9年4月24日)、ここでいう「やむを得ない事情があるとき」や委任者が解除権を放棄したとまでの状況がない場合、同条による解除が認められる(最判昭和43年9月20日、最判昭和56年1月19日)としている。前掲藤岡他188-189頁。

【改正点】あり。これら判例を整理したものが新651条2項である。委任事務が「受任者の利益のためにもなされた場合」(新651条2項2号括弧書注意)であっても、委任契約を解除し得るが、「やむを得ない事由」がない限り受任者に損害賠償請求しなければならない、とされた。新規定のもとでは、「やむを得ない事由」がなくとも新651条にもとづく解除が可能となったことに注意。道垣内弘人編『解説民法(債権法)改正のポイント』(2017年、有斐閣)219ー220頁参照(石川博康執筆)449頁。

5) 正しい。大判昭和7年4月30日である。

【改正点】なし。

丸山眞男「日本の思想」

   「思想が対決と蓄積の上に歴史的に構造化され」ず、ある論争が「共有財産となって、次の時代に受け継がれて」ゆかないという伝統が、日本の論争史にはある。論争において、「これだけの問題は解明もしくは整理され」何がそうでないか「けじめがいっこうにはっきりしないままたち消えになってゆく...