2022年7月24日日曜日

幸徳秋水『帝国主義』2

 「第3章 軍国主義を論ず」

軍国主義の「原因と目的」 「防御以外」「保護以外にあらざるべからず」。

 軍備拡張の原因 「一種の狂熱」「虚誇の心」「好戦的愛国心のみ」。

 甲「平和を希う」乙が侵攻しようとしている、乙「平和を希う」甲が侵攻しようとしている:「世界各国皆同一の辞を成さざるはなし」

 各国民は、「童男童女が五月人形、三月雛の美なるを誇り多きを競うが如く、その武器の精鋭とその兵艦の多きを競いつつあり」。

軍国主義者 「美術や科学や製造工業」「戦争の鼓舞刺激なくして能く高尚なる発達をなすは稀り」。

 「我は戦争が社会文芸の進歩」を妨害するのを見たが、社会の発達を助けるのを見なかった。「『膺てや懲らせや清国を』という軍歌をもって我は大文学と名くるを得ざるなり」。

軍国主義者 「刀槍艦砲」の改造進歩は戦争のおかげ。

 これは「科学的工芸進歩の結果にして」平和の功績。仮に戦争の功績としても、国民の智識道徳の進歩に貢献するところあるか。

軍国主義は「社会の改善と文明の進歩に資するを得る者にあらず」。「戦闘の習熟と軍人的生活は」、「決して政治的社会的に人の智徳を増進し得る者にあらず」。これを残す「弊毒実に恐るべき者あり」。軍国政治が「行わるる一日なれば、国民の道徳は一日腐敗するなり」。「暴力の行わるる一日なるは、理論の絶滅一日なるを意味するなり」。

 cf.ドレフュス事件におけるような「暴横なる裁判」は、「陸軍部内にあらざるよりは、軍法会議にあらざるよりは、決して見ることを得ざるところなり」。「普通民法刑法のいやしくも許さざるところ」。

「未だ軍備と徴兵が国民のために一粒の米、一片の金をだも産ずるを見ざるなり」。科学文芸宗教道徳の高遠な理想を「破壊し尽くさんとする」。

個人は武装を解かれているのに国家はそれができない。個人は暴力決闘が禁止されているのに国家はそれをできない。「二十世紀の文明はなお弱肉強食の域」を脱することができない。各国民が猛獣毒蛇の状態にあるのは恥ではないか。「これ社会先覚の士が漫然看過すべきのところなるか」。

幸徳秋水『帝国主義』(2004年、岩波文庫)51-84頁。


2022年7月9日土曜日

幸徳秋水『帝国主義』

 「第2章 愛国心を論ず」

帝国主義 「軍備」「軍備を後援とせる外交のこれに伴わざるはなし」。

 愛国心、軍国主義 「列国現時の帝国主義」にとって通有の条件。

 愛国心が愛する対象 「自家の国土」「自家の国人」「自家一身」。

愛国主義 「憐れむべき迷信」「好戦の心」「虚誇虚栄の広告」であって「先制政治家が自家の名誉と野心に達するの利器と手段に供せられる」。

 「国民の愛国心」 一旦その好むものにさからうと「人の思想をすらも束縛」し「歴史の論評をも禁じ」「総ての科学をも粉砕」してしまう。文明の道義はこれを恥とするが、愛国心はこれを「栄誉とし功名とする」。cf.「愛国的ブランデー

 軍人と愛国心 軍人は国家のために戦うというが、彼らの国家とは「皇上あるのみ、軍人自身あるのみ」。戦いの結果、軍備拡張、物価高騰、輸入超過「曰く国家のためなりと。愛国心発揚の結果は頼母しきかな」。敵人の生命、地、財を多く得ても、これのために政府の歳計「2倍、3倍」となる。愛国心発揚の結果は頼母しきかな」。 

 ① 「迷信を捨て智識」に、「虚構を捨て真実に」に、「好戦の念を捨て博愛の心」につく。これ「人類進歩の大道」。

 ② 「愛国心に駆使せらるる国民」 「品性の汚下陋劣なる」、「高尚なる文明国民をもって称すべからざる者」。

 ③ 政治、教育、商工業をもって愛国心の犠牲となさんと努る者 「文明の賊、進歩の敵」、「世界人類の罪人」。

「文明世界の正義人道は、決して愛国心の跋扈を許すべからず」。「卑しむべき愛国心は」「軍国主義となり、帝国主義となって、全世界に流行するを」。

幸徳秋水『帝国主義』(2004年、岩波文庫)19-50頁。

幸徳秋水『帝国主義』2

 「第3章 軍国主義を論ず」 軍国主義の「原因と目的」 「防御以外」「保護 以外にあらざるべからず 」。  軍備拡張の原因 「一種の狂熱」「虚誇の心」「 好戦的愛国心のみ 」。  甲「平和を希う」乙が侵攻しようとしている、乙「平和を希う」甲が侵攻しようとしている:「 世界各国皆同...